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英雄クロニクル(AUC)での事をつらつら綴るだけの場所
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昼下がりの子守唄

柔らかな光
つんと冷たい冬の風
温かな重み
優しい、歌声

まどろむ中の施しって、心地良いんですよね。
そして、施してる方も、自分の手で相手が心地よくなっているのを眺めてると気持ちがふんわりするというか。

ちなみに作中で歌っているのはマザーグースの一つ。
日本の童謡や童話と一緒で、あちらの其れも薄暗い内容のものが多いです。
それは恐らく、昔の厳しい生活を物語っていたり、そこで得た教訓を差していたりするんでしょうね。
救済の別歌詞verが後の世に作られるというのも、救いがあって時代に合わせていっているようでよろしいかと。


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 空気入れ替えの為に薄く開けた窓から、冷たい風がふわりと部屋に入り込む。
 けれども、それよりも温かな陽射しが窓から差し込んでいるからか、寒さはそこまで感じない。
 寒さを感じない理由は恐らくもう一つのせいでもあるのだろう。

「……Hush a bye baby, on the tree top,
 When the wind blows the cradle will rock,」

 小さな座布団で折り重なってぷぅぷぅと眠る桃と緑の子鬼を横目に見、そして視線を前に向けて微笑むと、ユキヤは柔らかな声で小さく歌を歌いだした。

「When the bow breaks, the cradle will fall,」

 それは、この世界にはない言葉の子守唄。
 あやすようなその言葉に呼応するように、外の木々が風にそよぐ音がさわさわと開けた窓から響いてくる。
 何だかいつもよりゆっくりとした流れを感じ、笑みを深くしながら目の前に広がる栗色の癖毛をそっと撫でる。
 柔らかい手触りと、規則正しい吐息。
 今は閉じられた双眸が僅かに震える。
 ああ、睫毛が長いなぁ……。などと、まるで女子のような感想が胸の内に振って沸いて、それがおかしくて更に笑みが深くなった。

「……And down will come baby, cradle and all...」
「…………ん、」

 あやすつもりで歌っていた子守唄に気づいたのか、目の前の双眸がふわっと開かれた。
 深緑の瞳が、ぼんやりと見上げてくる。

「おはよう、ヒロヤ。ごめん、あやすつもりだったんだけど、起こしちゃった?」

「……んーん…………てゆうか、寝ちゃってたんだ、僕……」

 指先で瞼をこすり、目をしばたかせる動作が可愛らしい。
 ぽんぽんと髪の毛を撫でながら、ユキヤは少し申し訳無さそうに笑った。

「膝を貸したら、割とすぐにね。疲れてたんじゃないかな?そろそろ遠征増えてくる頃っしょ?」

「疲れを感じたら君を吸うことにしてるから、そんなことないと思うけど……それよりも」

「……?」

「さっきの子守唄。英語だよね?ユキヤ、英語しゃべれたんだ?あ、クォーターだから喋れるか」

 膝に寝転んだまま、手を伸ばしてくるヒロヤにユキヤは微笑んだまま首を横に振った。

「英語はぜーんぜん。ばーちゃん、俺の前では日本語しか話してくれなかったからさ。
 でも、時々英語の子守唄歌って寝かしつけてくれてたんだ。……あっちの国の民謡なんだって」

「英語も喋っててくれたらバイリンガルだったのにね。残念だったねユキヤ」

 悪戯っぽい笑顔を浮かべて頬に触れてくるヒロヤにくすくすと微笑み返し、そうだねと小さく頷いた。

「そしたら超モテ鬼ちゃんになれたかもなー。……ばーちゃんは、見た目は白人でももう日本人になったくらいの心意気とつもりで日本に住んでるらしいから、英語はいらないんだって。ヘタに二ヶ国語覚えて頭の容量食うのもいけないってさ」

「……そっか。すごくすごく孫思いのおばあちゃんだったんだね」

 慈しみを孕んだヒロヤの声に、自然と顔が綻んでいく。
 一緒に過ごすことが多くなって以来、ヒロヤの言葉に感情が含まれていく度合いがどんどん高くなっているように感じて、ユキヤの心もそれにあわせてどんどんとほぐされていった気がする。
 今もそうだ。
 何気ない、ヒロヤの言葉で胸がこんなにも満たされていく。

「うん、すごくすごく、ね。
 …………、いつか…………」

「……ん?」

「んーん、なんでもない。身体冷えてない?窓閉めよっか?」

「ううん、大丈夫。それよりも……もう一回、さっきの子守唄うたってほしいな?」

「もっかい?いいよ。オンチじゃなけりゃいいんだけど」

 膝の上のヒロヤにもう一度微笑みかけ、頬を撫でてもらったお返しとばかりにその髪や額を撫でながら、ユキヤはゆっくりとゆったりと歌いだした。

「Hush a bye baby, on the tree top,
 When the wind blows the cradle will rock,
 When the bow breaks, the cradle will fall,
 But mama will catch u, the cradle and all......」

「……あれ?歌詞さっきとちがくない?」

「……ふふ、別バージョン」

「…………そっかぁ……」

 冷たい風がふわりふわりと窓の隙間から部屋に入り込む。
 けれども、ユキヤは寒さを感じない。
 身も心も、温かさでいっぱいだから。

「(……いつか…………ばーちゃんに、ヒロヤを紹介したいなぁって……、それは俺の我が儘なんだろうな)」

 先ほど、言いかけて思い留まった言葉を、胸の内だけで呟く。
 大切に思う二人だからこそ、引き合わせたい。
 叶うことのない願いは、相手を蝕む毒でしかない。
 その甘美さに酔いしれるのは自分だけだから。
 もう一度目を閉じたヒロヤへ優しい微笑みを浮かべながら、ユキヤはその願いをそっと仕舞いこんだ。



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