渇いた土と乾いた空気。
熱を伴う風は砂を巻き上げ、視界を遮る。
昼は灼熱、夜は極寒となるその砂漠の国は、彼の母国とは随分と様が違っていた。
灼熱の大地を踏みしめては一歩踏み出し、確かな足取りで新たに建った二つのパオを目指している少年の影が一つ。
真白の髪、深紅の瞳、長く伸び先端が尖った耳はエルフを彷彿とさせるが、マッカのこの地には不釣り合いなほど白い肌が、この地に根付くエルフとは似て非なるものだということを語っていた。
まだ年端もいかないその少年は、穏やかな笑みを浮かべ、一人小さく唄うように言の葉を紡ぐ。
「君と再び相見えることを願って幾星霜……暫く、漸く、君に逢えるんだねぇー」
遠くに見える二つのパオと、その前ではしゃぐ二人を赤い瞳でしっかりと捉え、笑顔を深くして目を細める。
真白の髪が風に揺らされ、隠れた左半面がふわりと露わになると同時に、少年の姿は霞がかったようにぶれ、跡形も無く消え失せた。
刹那に垣間見えた左半面、そこにはまるで爬虫類のような鱗が連なり、刀で斬りつけたような大きな傷痕が左目へと絡みついていた。
そう、まるで彼を縛る戒めのように。
「君が紡いでいく物語……その世界が君に牙を剥くのなら、僕が全部食べてあげる。
…………時と場合によっては、そう。君ごと、ね……」
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