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英雄クロニクル(AUC)での事をつらつら綴るだけの場所
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戦場の砂遊び~Sand art and play with girl~

14期英雄戦
クールことセブン率いるイズレーン皇国対マッカ連邦王国部隊に派遣された時のお話。
皇国ひとことでのサクヤんとのやり取りを元に妄想補完してSSにしたものです。

まだ、二回目の英雄戦選出なのにめっちゃ先輩気取りな郁ェ……w

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. 幾度となく3年を繰り返す世界。
 幾度となく戦を重ね、血と涙を流し続ける世界。
 争いが争いを呼び、新たな黄金の雛鳥を生み育て、そうして続けた14度目の刻碑暦999年、季節は晩秋或いは初冬である11月下旬。
 この3年戦争の世界で一番大きな戦いが始まろうとしていた。

 通称、英雄戦と呼ばれる国を上げての決戦であり、国の命運を決める戦いでもあるそれは、恐らく最初こそ神聖な戦いであったろうが、この世界が繰り返されていることを知る歴代の英雄達はこの戦いを一種のお祭りと捉えるものもおり、中にはそれを楽しむものまでおり、厳かな雰囲気が流れることもすでに少なく、3年戦の集大成として一つの節目としてその戦いを迎えていた。
 そんな14度目の戦いが渦巻くマッカ連邦王国本拠地に程近い場所。
 砂塵が吹き荒び、オアシスの水が煌く荒野の地に集結した9つの影があった。
 イズレーン皇国所属英雄セブン率いる対マッカ連邦王国部隊である。
 英雄であり、この部隊の大将でもあるセブンは最終確認という名目で一人遅れており、遠くに見えるマッカの本拠地を見据えながら9武衆の面々は思い思いに暇を潰しているようだった。

「大将はまだなのか。さて、どう暇を潰すかね」

 愛用武器である斧を肩に担ぎ上げ、羽織った風除けの首元を直してから、かけていたゴーグルを額まで引き上げ、9人のうちの一人がごちる。
 赤く長い髪、赤い体躯、体躯と同じく赤い獣の耳と尻尾。鼻筋の通った凛とした顔はまさしく狼のそれで、誰がどう見ても狼の獣人だと皆口を揃えるであろう。
 14度続く英雄戦の中で、初めてこれに参加した異世界流入者のサクヤである。

「……敵さんもまだ動く気配はないし」

 遠くに見える敵陣を見据え、手にした斧をぎゅっと強く握りなおし、サクヤが再びごちる。
 いくら事前に動きの打ち合わせはしてあれど、大将が指揮をとらぬ限りは動けず、ともすればこの緊張感漂う待機の時間は精神力を磨耗させ、その身を緊張させるには十分過ぎるくらいであり……。

「……よっこいしょ」

 斧を一度仕舞い、乾いた砂が風と共に流れる地面へと腰を下ろすサクヤ。
 そのままじぃっと砂を見つめてから、何を思ったか砂いじりを始めた。

「……山でも作ってみるか。砂がサラサラだから難しいかな」

 肉球のついた大きな手でサラサラと崩れる砂を何度か寄せ集め、ポンポンと叩きながら小さな山を作っていく。
 しかし、やはりそこは粒子の細かい砂漠の砂。ほんの少しその場が盛り上がるだけで山とは似ても似つかないものしか出来上がらない。

「やっぱり難しいか……」

 何度か寄せ集めては崩し、寄せては崩しを繰り返し、一人呟く。
 他の面子はその姿を大して気にする風でもなく、おしゃべりをするもの、瞑想をするもの様々で、それに安心したか、サクヤは更に砂いじりへのめりこんでいく。

「……水があったらある程度固められそうだなぁ。かといって飲料水使うのは勿体無い気もするし……」

 ぺたぺたと肉球で砂を押さえつけながら、尚呟くサクヤの下に一つの小さな影が迫った。

「……オアシスの水汲んでくるかな?いやでもそこまでするほどのことでもないし……ん?」

 影に気がついたサクヤが顔を上げ、首を傾げる。
 目線の先に居たのは、少女だった。
 白い着物に緋色の袴。所謂巫女装束と呼ばれるものを着込み、黒髪を一つに括り上げた少女がサクヤと同じようにしゃがみこみ、自身の膝に手を置いてにっこりと微笑んでいた。
 同じ英雄戦を戦う、独自巫女集団の次期当主だと名指される赤池 郁である。

「砂遊び楽しそうー。私も混ぜてもらっていい?」

 にっこりと微笑んだまま、小首を傾げる郁。髪の毛を留める金色のヘアピンがきらりと光る。
 突然の問いかけに若干の戸惑いを覚えつつ、サクヤは小さく頷いた。

「どうぞ。なかなか砂が固まらなくて難しいけれどね」

「へへへー、お邪魔しまーす」

 腰に下げていた日本刀を一度鞘ごと抜いて地面へおろし、サクヤと同じようにサラサラと流れる砂を手で救い上げていく。

「わー、ホントだ。砂漠の砂ってホントにさらっさらなんだねー」

 くすくすと笑いながら先ほどのサクヤと同じように砂を掬ってはさらさらと流し、寄せては崩しを繰り返しながらサクヤへと目を向ける。
 まだ戸惑ったままのサクヤが、そうだね。と小さく頷いたのを見やり、郁は日本刀と一緒に携えていた小太刀をすらりと鞘から抜き放った。

「さっきサクヤさんも言ってたけど、すごい砂粒が細かいから水があったらかっちり固まりそうだよねこれ」

「そうだね。でも飲料水を使うのは勿体無いし、遊びの為にわざわざオアシスまで水を汲みにいくのもどうかと思っていたところだよ」

「ふふふ、そういう時に私のこの時雨が役に立つんだよー」

 悪戯っぽく微笑み、抜き身の小太刀の切っ先を砂に向けて郁が何か小さく呟くと、切っ先から水滴が幾つも現れ、ポタポタと砂へ沁み込んでいく。
 砂が適度に湿ったのを片手で確認しながら、小太刀を再び鞘へと納める郁。

「便利だなぁ。魔法の力でも込めてあるの?」

 郁の動作を見守っていたサクヤが感心した様子で問いかける。
 小さく微笑んだまま、郁は首を横に振った。

「魔法とは少し違うかな。刀神って知ってる?銘ある刀や、力をもった刀には神様が宿っているんだよ。この時雨もそう。水の属性の神様が中に居てねー、今のはその力をほんの少し借りたの」

 砂を小高く山のようにぺたぺたと固めながら郁が答える。
 納得したようにサクヤが頷き、山を作る作業を手伝うようにぺたぺたとこちらも周りを固めていく。

「なるほどね。魔法とはまた違った力かぁ。この世界は色々な力があるんだね」

「そうだねー。イズレーンは特にかな。八百万の神様がいる場所だからね。マッカなんかも精霊がいるけど。あ、折角だしトンネル掘ろー」

 何気ないやりとりを続けながら、固めた山の下部分を手で掘りながら、郁が提案する。

「お、いいね。無事開通するかな」

 それに賛同したサクヤも一つ頷いてから反対側からゆっくりと手で掘り進めていった。

「あと少し……よいしょ、よいしょ……サクヤさんの手ーみっけ」

 ゆっくりとお互いに掘り進めていき、お互いの手が少し触れ合うところまでところで郁がにししと悪戯っぽく微笑み、サクヤの手をぎゅっと握る。

「うわっと……」

「ふふふふー……肉球、湿ってるねー。…………緊張、してる?」

 悪戯っぽい笑顔はそのままに、手を握ったままで郁が首を傾げる。
 手を握られたまま、どうすることも出来ないサクヤは、一瞬視線を周囲へ泳がせてから観念したように極小さく頷いた。

「してるよ。心臓もバクバク。何せ初めての英雄戦なものでね」

「ふふふ、そっかー。しかもセブンって結構ぎりっぎりまで打ち合わせに時間使うからこうやって待たされるし、余計に緊張するよねー」

 サクヤから手を離し、穴の内側をぺたぺたと手で固めながら郁が苦笑する。

「でもね、緊張することないよー。これ、お祭りみたいなもんだって思えばいいし。……今回は、あの二人がお世話になったらしい人がこの世界を去るから、ちょっと雰囲気が惜別のそれになってるけど、いっつも結構みんな楽しんでやってるくらいだよー」

「本当に?戦争なのにみんな気楽だなぁ……こっちは失敗したら、とか倒されたら、とかうっかり考えちゃうのに」

 郁に倣い、サクヤも穴の内側をぺたぺたと固めながら肩を竦める。

「んー、私もそれは思うけどねー。でも、こんなに心強い仲間がついてるんだもん。ちょっとくらい失敗しても大丈夫だよ。倒されたらーってのもそう。もし負けて自分が撤退することがあっても、あとのことは仲間に任せればいいって私は思ってるし」

「そういうものなのかね……」

「そういうものだよー。仲間を信じるってそういうことじゃないかなー。だから、私はサクヤさんのことも信じてるよー。私の背中を預けてもいい仲間だって」

 穴の中からサクヤの手をポンポンと軽く撫で、郁がにっこりと微笑む。
 その笑顔を見て、自然とサクヤも顔に小さな笑みを浮かべていた。

「なるほどね。ありがとう、郁さん。じゃあ俺もみんなに背中を預けないとな」

「ふふ、そうだねー。こっちのことも信頼してもらえると嬉しいかなー。いよっし、開通!」

 そろりと穴から手を抜き去り、側面が崩れ落ちないのを確認してから郁が嬉しそうににっこり笑う。
 サクヤもそろっと反対側から手を抜き去り、同じように微笑んだ。

「おー、開通!」

 嬉しそうに微笑む二人の目がそのままお互いを捉える。小さく頷き合い、それが何故かおかしくもあり、二人でそのままクスクスと笑い合った。

「ありがとう、郁さん。緊張が随分と薄れたよ」

「どーいたしまして?緊張してると、本領が発揮できないからねー。あっ、私のことは郁でいいよっ」

「じゃあ、俺のことはサクヤって呼び捨てでいいからなー」

 ひとしきり笑い合い、立ち上がったサクヤを見上げ、郁が嬉しそうな声で語りかける。
 それを受けてサクヤも口許に笑みを浮かべ、郁を見下ろしながらそれに応える。
 そうしていると、遠くから蹄の音が響き、皆の待ち侘びた英雄が、その姿を現した。

「我らの英雄のお出ましだー」

「英雄は遅れて登場するってね。さぁて、では出撃しますか」

 日本刀を腰に携え直し、郁がわーいと両手を万歳の形に挙げる。
 腰に携えた斧二丁を構え、サクヤも戦闘へ向けて態勢を整え、拳を郁の方へ向けた。

「よっし、じゃあ往こーサクヤ!」

「往くか、郁!」

 にやりとお互い笑い合い、こつんと握り締めた拳同士を軽く打ち合わせる。
 そして、英雄セブンの合図を受けて、それぞれの攻め込むの陣地へと駆け出していった。

「負けんなよ郁!」

「ふふ、サクヤこそ負けないでねー!」

 お互いの声援を、お互いの背に受けながら。
                               fin.



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