いつもの四行説明はなし。
今期RPでおとやんが召されたので、そこ等へんの心境をこう、郁がぐだぐだ語ってるだけです。
[0回]
女であることを一切考慮しない人なのだと、初めての打ち合いで私は知った。
恐らく、サクヤもそうなんだろうとは思う。
でも、彼は仲間にはその力を向けない。だから、私との打ち合いでも滅多なことでは顔を狙わない……気がする。
でも、おとやんはそうじゃなかった。
そこが、攻撃手順で有効な場所とわかるや否や、顔だろうと下半身だろうと、しとめる勢いで狙ってくる。寸分の狂いもなく。一瞬の躊躇もなく。
……それが、私は嬉しかった。
異性に向ける感情というのではなく、純粋に戦える相手として。
女であるがゆえ、逃げ道はいくらでもある。
戦火激しいこの世界この時代でも、それはとても顕著なこと。
実際問題、自身と部族が助かりたいが故に敵部族長の妾になる女性は少なくない。
女であるがゆえ、真っ先に狙われることを加味し、軍部の人間となり幹部へとのし上がった女性が、他国に何人かいるのと、私は巡りの間に知った。
いざとなれば結婚をし、子を生んで男に護られて生きていく。それが女。
そう、括られるのが私はたまらなく嫌だった。
男に生まれればよかったと思ったことも多々ある。
……赤池の教えというか、しきたりもそれに絡んでいたから余計に。
女にのみ、強い力を宿す赤池の血筋。
もし、男児が生まれた場合は分家筋に養子に出されることがほとんどだったと母から以前聞いたことがあった。
……もし、私が男に生まれていたら。
そうだったらば、二十までに相手を見つけ契りを結んで子を成さなければいけないことも。
そうしなければ死ぬという恐怖もなかったろう。
サクヤ達に出会う前は、そんなこともよく考えていた。
今では、考えることは二度としない。
女で、赤池の次期当主で、呪われた子だったからこそ、サクヤと出会え今夫婦として暮らしているのだから。
女だからと、赤池の人間だからと、考慮されるのは御免被りたかった。
けれども、敵であれば消え去るその配慮と考慮が、味方だとどうしても顕著でいて。
女だから庇護されるというのは嫌だと突っぱねたところで、最早遺伝子レベルでの刷り込みでもあるかのように、本気を出されることはついぞなかった。
ちなみに、後日ユキヤに過去の話としてそれを話したところ、女性軽視の国でない限り私の願いが叶うことはまずなかったろうとのことだった。
だからこそ、考慮せずにまっすぐ向かってくるおとやんは、私にとってとても嬉しく楽しい打ち合いの相手で。
だからこそ。
おとやんが「別」の理由で亡くなった世界に生きる未来の私は、ミヤコやカナメに対してその話をしたのだろう。
そして、ミヤコはそんな英雄譚を数多く聞かされ、おとやんとひろやんを半ば英雄視しては過去の世界を覗きたいと願っていた、と私は推測した。
未来の私やサクヤは、どんな思いと意図があって双子をこの世界に送り込んだのだろうか。
一瞬眺めて帰ってくる以外には、過去に関わるなとは厳命しても到底無理な話だろうに。
もしかしたら、過去を変えたかったのかも、しれない。
それによって、今居る自分達が消えて未来が変わり、新しい世界になろうとも。
だとしたら。
この結果は。
この結果は、二人の望んだものとは、かけ離れているのではなかろうか。
首だけのおとやんを抱き締め、何とか現実を受け入れようとするミヤコを見つめ、私は眉尻を下げた。
私同様、女であることを考慮せずに全力で取り掛かってくれ、且つ師事をしてくれるとミヤコはおとやんにぞっこんと言っていいほど懐いていた。
もしかしたら、師匠以上の感情持ってたりしてね。何てサクヤと微笑ましく眺めていたくらい、ミヤコはおとやんに心酔し、信頼していたと思う。
15にも満たない子が、平和な世界で生きてきた子が、身近な人の死を嘆いている。
自分のせいだと。
どんなに、辛いことなのだろうか。
……サクヤが、願いを叶えたら消えてしまうかもしれないと泣いたあの夜のことが、今のミヤコに重なる。
何も、自分のことは語らない彼のことだから。
どうして、だとか。何で、だとか。
そう言った感情が渦巻いても、解決することはない気がする。
たとえ今ここにおとやんの霊が出てきたとしても、それはきっと変わらない。
けれども、それでも。
ただ只管。
自責の念に駆られ、謝りながら泣く一番弟子の為にも。
理由は話さなくてもいい。ただ、姿を見せて欲しいと、切に願ってしまった。
そして、私は心の中でそっと囁く。
自身を護ってくれた氷の神への契りを。
契約としてでもいい。
ミヤコの為に、おとやんをここに。
と。
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